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石塚左玄が説く入浴と健康について

左玄が説くところの入浴の必要性というのは、身体を清潔にし気分をさっぱりさせ、血液の循環をよくして、消化吸収を促し、発汗を盛んにして、体内に滞ったナトロン塩を排泄させることである。

各人が好む入浴の頻度や温度は、住む地域や普段食べているもの、職業によって異なる。日常的に美食をしている人や激しい運動をするがゆえに塩分を多く摂取する人は体内にナトロン塩が溜まりやすく、普段粗食で済ます人に比べたら、より多くの入浴と高い水温を好む。また地域によっても異なり、温暖な南方の海側に住む人は、北方の山側に住む人に比べ、入浴の回数を増やし、温度も高くする必要がある。

昔は大阪、中国、四国、九州の海側の都市には入浴施設とは別に蒸し風呂があった。これは体内の脱塩方法であったが、明治維新後に涼しい気候の西洋の衛生法の普及とともに無くなってしまった。また、海に囲まれた日本では知らず知らずのうちに体内に塩を溜めやすく、入浴し脱塩することで病気を防ぐ衛生法があったが、日本の食が西洋化されることで、カリ塩の多い、パン、ジャガイモ、ジャムなどを常食するようになり、古来からの脱塩により治療する考えは消えてしまった。

左玄の結論としては、普段から穀採食の粗食をしている人は少ない回数の入浴と低い温度の入浴でも不快にならないが、普段から肉類を多食し、酒を多く飲む人は体内に滞ったナトロン塩を排泄するために、多くの入浴と高い水温を好むということであった。

私は、左玄が伝えようとしたのは、脱塩という入浴の効果とともに、粗食の強みではないかと察する。

普段から粗食(左玄の言うところの正食)をすれば、頻回な入浴をしなくても不快にならず、心身ともに健やかに過ごすことができる。日常的に美食をすれば、沢山の入浴も必要になるし、病気も罹りやすくなるためより専門的な医療も必要になる。それに美食をするには金、調理するための手間や時間、美食に合った食器など必要な項目がたくさん出てくる。それでいて、喜ぶのは目と口先だけであり、美食している時間はすぐに過ぎ去ってしまう。その点、粗食は用意が簡単で、見た目は貧相かもしれないが、食べれば腹持ちが良く、胃の負担も少ない。

この章を読んで、普段から粗食で済まし、日々身体を清潔に保ち、心も清らかな状態を保つべきであると感じた。

出典:食べもの健康法(農山漁村文化協会出版、丸山博解題、橋本政憲訳)

8月2日 大箸

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