前回の続きで、石塚左玄は日本においては、魚、鳥、獣の肉類を食べることは可能な限り控えよと勧めた。
左玄は多面的な理由から肉食を控えることを説いた。
まず、これは前回の投稿にも書いたが、人間に最も適した食物は穀物だからである。人間は穀物を食べるための歯(臼歯)を一番多く持っているため、穀物を中心に食べなくてはならない。しかし、その国土や気候に合わない穀物を食べたり、穀物を加工して栄養をそぎ落として食べる場合には栄養を補うために副食として肉、魚、卵が必要になってくる場合もある。
また、ナトロン塩とカリ塩のバランスを考慮すると、ナトロン塩が多い風土の日本においては肉類を食べることでナトロン塩の過剰摂取となり、様々な弊害が出てくるからだ。このナトロン塩とカリ塩という言葉であるが、ナトロン塩はナトリウム化合物を示し、カリ塩はカリウム化合物を示す。ではこの二つのバランスとは何かというと、左玄は有機物(炭水化物、タンパク質、脂肪)がよく消化、吸収されるには無機物(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)の働きが必要であり、特に摂取するナトリウムとカリウムの量のバランスを一定に保つことが健康において重要であることを発見した。
ナトロン塩は動物性食品に多く含まれ、硬化と収縮の作用があり、カリ塩は植物性食品に多く含まれ、軟化と膨張の作用がある。血液中のナトロン塩が多くなると血液が粘り、動作が鈍くなる。一方で血液中のカリ塩が多いと血液が薄くなり、身体が虚弱になってしまう。このナトロン塩とカリ塩のバランスが一定であれば体格も立派になり、心身ともに健康でいられると左玄は説いた。
日本の風土には海に囲まれているためナトロン塩が多く含まれているため、ナトロン塩を多く含む肉類をたくさん食べるとナトロン塩の過剰摂取になってしまい、それが原因となる病気を発症してしまう。(一方で欧州は涼しくて寒く、カリ塩の多い風土であり、カリ塩を多く含む麦や芋を主食としているため、ナトロン塩を補うために肉類を食べる必要がある。)
そして、肉食が多くなると人の心は柔軟性がなくなり、荒っぽくなるという肉食が人の性質に及ぼす影響を危惧したからだ。肉食が増えると機転は利くが知恵が浅く、落ち着きのない性格になってしまう。
以上の点から、左玄は日本における肉食の弊害を示し、肉食をできるだけ控えることを勧めた。しかし、左玄は肉には香味と旨味があるので人が肉を好むことは十分に理解している。だから肉食を否定しているわけではなく、肉を食べ過ぎることなく風味付け程度に食べなさいと言った。
私の感想としては、適度な肉食の量というのは住む場所や運動量、年齢や体格によって異なると思う。各人が生活を振り返りながら自分に合った肉食の量を見つけていく必要があるのではないか。何事においても節度は必要であるため、美味しいからと肉類を多く食べ過ぎる事がないよう注意が必要であると考える。
写真は大豆ミートを使った「鳥そぼろ風弁当」。大豆ミートは弾力のある食感でよく味付けすれば肉のような旨味を感じられる。このように植物性の食品が肉の代わりになることもある。
出典:食べもの健康法(農山漁村文化協会出版、丸山博解題、橋本政憲訳)
7月22日 大箸








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