今日は大学生時代に何度も読んだナシーム・ニコラス・タレブ(Nassim Nicolas Taleb)の最新著書である「身銭を切れ(Skin in the game)」を土浦図書館で借りてきた。一時間程読んだが、相変わらず面白く随分引き込まれてしまった。この本の感想を書くには読み足りていないため、後日書くことにする。今日はこの著者であるタレブについて簡単に紹介したい。
タレブは金融トレーダーであり、2006年頃に「ブラックスワン」という本を書き、それが世界的ベストセラーになった。この本は、人間の知識の限界を示している。ブラックスワンは知識の脆弱性の例えであって。こういうことだ。100万回白い白鳥を見たからといって、白鳥は白いということを証明できない。たった一羽の黒い白鳥(ブラックスワン)が現れれば、白鳥は白いということは覆る。彼は、この今まで真実だと言われてきたことがひっくり返る事象をブラックスワン現象と言い、この現象は社会のどの場面にも顔を出すから注意しろと警告した。
ブラックスワン現象は三つの特徴を持っている。人間の予測の範囲外から起こる。これまでの常識を変えてしまうほどの強烈な衝撃がある。後から振り返るとあたかも予測できたかのように思えてしまう。現実社会の中でブラックスワン現象と呼ばれるものには、第二次世界大戦、9.11、リーマンショックなどがある。これらの事件は、起こる前には予測できなかったので、起こるべくして起こったのではなく、起こる予兆が無かったから起こったということになる。そして、これらの事件は、その後の社会の在り方を変えてしまうほど大きな衝撃があった。しかし、時を経て振り返ってみるとよくできた物語のように語られてしまい、あたかも事前に予測できたかのように捉えられてしまう。
因みにタレブはブラックスワンの中で、金融機関が莫大な借金をして投機をしていたら、いずれ返せなくなり、世界的な金融システムの崩壊を招くと警鐘を鳴らしていた。その2年後にリーマンショックが起こり、タレブはリーマンショックを予言していた人物として一躍有名になった。その他にもタレブは色々な予言的な書き方をしていて、彼は国中の財産を東京に集中させてしまっている日本に再び関東大震災が起こった場合の損害を懸念している。(1923年の時代はまだ富が地方にも分散されていたから損害が少なったが、今は途方もなく大きな損害になるだろうと。)また、10年以上もの前に、世界中の人々が自由に各国を飛び回ったら、いずれ大きな伝染病が発生するだろうとも書いていた。
彼は金融トレーダーで、将来を見越して動いているように思われるが、実はそうではない。彼が言いたいのは人間がどれだけ知識を詰め込んでも将来を見通すことはできないということだ。それが知識の限界である。だからこそ用心し、それでいて何がおこるかわからない将来に対して恐れることなく、常に揺れ動かない強い心を持つことを説いた。実はタレブはローマ帝国時代のストア派の哲学にかなり影響されていて、古代の哲学者が勧めた生き方を現代で試そうとした。(私が哲学者のセネカを知ったものタレブのおかげである。)将来のことなどわからない、つまり不確実性の世の中でどうやったら積極的に生きることができるかというのが彼のテーマである。(このことを実践するのがまさに今日借りてきた身銭を切れの生き方である。)
タレブの紹介は以上である。
今日はいつも書いている内容とは異なりタレブのことを紹介した。もしタレブのことに興味がある人がいたらもっと詳しく書くのでコメントをもらえたら嬉しい。
7月14日 大箸







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